2008年4月5日土曜日

メキシコの実態

 僕がいるメキシコは、近年の安定した経済成長に加え(実質経済成長:2004年度4.4%、2005年度3・0%、2006年度4・8%)、以前の中立・不干渉主義から積極的な外交政策により、1992年に米国、カナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)、1993年にアジア太平洋経済協力(APEC)、1994年に経済協力開発機構(OECD)に参加し、また2002~2003年期には国際連合安全保障理事会非常任理事国を務めた他、国際司法裁判所判事やOECD事務総長など国際機関の主要ポストを占めています。日本との関係は良好で、2004年には日墨経済連携(EPA)が結ばれ、日墨貿易総額はその1年後に約38.4%、2年後には約76.3%と両国にとって利益となる関係が築かれています。

 表面的には先進国の仲間入りを果たしたメキシコですが、現実はまだまだ多くの問題がうずまいています。メキシコには多くの南米からのマフィア集団(特にコロンビアから)が、麻薬取引を米国で行うためにメキシコに違法入国をします。彼らの入国の手口は、メキシコとグアテマラの国境にいるメキシコの入国審査官に、賄賂を受け取り彼らを通すか、殺されるかの選択を迫ることです。数人の審査官(軍隊)は、数十人で押し寄せるマフィア集団をもちろん食い止めることはできないため、金を受け取り、違法入国をさせます。そしてメキシコ国内で政府にも賄賂を渡し、勢力を広げていきます。

 そのマフィア集団は頻繁に殺人事件を起こす他、メキシコ北部の山岳地域に住む貧困層の弱みをつけ、半強制的に麻薬を栽培させます。貧困層の人たちは農業を営むよりも麻薬を栽培する方が収入が良い他、断ると殺されるので、マフィアの要求を受け入れるしかありません。そして政府もその実態を知っているのですが、マフィアから事前に賄賂を受け取っている上、貧困層の人々からその職業を奪うと、彼らは生きていくことができなくなるので、見て見ぬふりをしなければならないというのが現状です。

 マフィアの問題の他には、窃盗の犯罪も多発しています。僕も最近財布を盗まれたのですが、その後2週間の間に僕の知り合いが3人も窃盗の被害に遭いました。窃盗の中には、単なるスリではなく、人に危害を加えてから物を盗む犯罪も少なくありません。メキシコシティーでは以前、ある通行人に腕時計が素敵だから見せてくれと言い、その手をつかみ、訪ねた他の仲間が、その通行人の腕を切り、時計を奪うという事件も多発しました。またメキシコシティーの貧困層が集まって窃盗集団を作り、盗みのために他の州の裕福な地域へ行き、犯行を繰り返しています。

 警察の汚職もメキシコ国内の安全を悪化さす原因となっています。これは有名な話ですが、例えば飲酒運転をし、警察の検問を受け、飲酒が発覚したとします。メキシコでは飲酒運転の事故が多発してるため、飲酒運転をすれば投獄と罰金の重い罪が科せられます。しかしその警察官に5000円程度(その時の所持金により金額が変わる)の賄賂を渡すと、見逃してくれるケースが大半です。(現在は警察官の給料が少し上がり、こういったケースは減少傾向にあります)

 まだまだメキシコには解決すべき問題が多くあります。しかし、だからこそこの国での留学には、大きな意味があるのだと思います。

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